2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

虹の彼方に

新宿二丁目 (新潮新書) 作者:伏見 憲明 新潮社 Amazon 新宿二丁目は繁華街であるだけでなく、まさに「多様性」や「包摂」という昨今の時代的なキーワードを街ごと体現しているのである。もちろんそれは他と比べたら、という相対的な評価にすぎないのではある…

一目瞭然

バロックの光と闇 (講談社学術文庫) 作者:高階 秀爾 講談社 Amazon バロック音楽の隆盛やバロック美術に対する関心の高まりを通じて、「バロック」という言葉は今では、少なくとも芸術愛好家のあいだでは、かなり身近なものとなっているといってよいであろう…

花束みたいな恋をした

死にたくなったら電話して 作者:李龍徳 河出書房新社 Amazon 主人公徳山久志はエリート一家の出がらし、国立医学部志望というわけでもないのに三浪中のチェーン居酒屋アルバイト、もっとも「仕事は遅い、要領は悪い、グラスはよく割るし、料理皿はよく落とす…

シンデレラは眠れない

日本の道化師 (平凡社新書0974) 作者:大島幹雄 平凡社 Amazon クラウンは私にとって身体の一部のような存在となった。本書はクラウンと共に40年以上にわたって過ごしてきた私が、日本の道化師の歴史を追いかけたものである。西欧でのクラウンの歴史を踏まえ…

アンチ・クライマックス

古関裕而-流行作曲家と激動の昭和 (中公新書) 作者:刑部 芳則 中央公論新社 Amazon 古関は単なる流行歌の作曲家ではない。昭和の戦前、戦中、戦後という激動の時代を生きた彼が生み出す曲には、時代性が反映されている。 彼は福島県の呉服屋に生まれ、商業学…

月が綺麗ですね

ヴェニスの商人 (光文社古典新訳文庫) 作者:シェイクスピア 光文社 Amazon 月が綺麗ですね。 嘘か真か、あるときI love youの訳し方を問われて漱石が答えたそうな。 月の光が美しい。こんな夜、かぐわしい微風が木々の梢にやさしくキスし、木の葉もざわめき…

欲しがりません 勝つまでは

戦国、まずい飯!(インターナショナル新書) (集英社インターナショナル) 作者:黒澤はゆま 集英社 Amazon 「あれ食べてみたい」 ブラウン管を指さしてそう母親に言ったのは何年前のことだろう。 その時、テレビに映っていたのが『独眼竜政宗』で、渡辺謙扮…

水辺のゆりかご

「男らしさ」はつらいよ 作者:ロバート・ウェッブ 双葉社 Amazon 長い間にわかってきたのは、実は僕もごく普通の……ありきたりの男なのではないかということだ。しかも、自分は普通の男ではないとうぬぼれていて、そう信じ込むために大変なエネルギーを費やし…

それでも夜は明ける

ブラック・ライヴズ・マター回想録: テロリストと呼ばれて 作者:パトリース・カーン=カラーズ,アーシャ・バンデリ 青土社 Amazon 時は2016年。とある意見書が回されて、遂にはホワイトハウスまで到達した。その書面によると、私たちはテロリストということに…

美味礼賛

食の実験場アメリカ-ファーストフード帝国のゆくえ (中公新書) 作者:鈴木 透 中央公論新社 Amazon そもそも食べ物は、人間の身体を形作る存在であり、生命の安全に関わっている。つまり、何をどう口にするかは、一見すると極めて個人的な選択のように見える…