2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

平気でうそをつく人たち

キツネ目 グリコ森永事件全真相 作者:岩瀬 達哉 講談社 Amazon グリコだけでなく、森永製菓やハウス食品など菓子メーカーや食品メーカーの経営者の心理を手玉にとり、言葉をもてあそびながら執拗に脅すことで相手を屈服させ、カネを脅し取ろうとしたのがかい…

聞いてないよ

患者の話は医師にどう聞こえるのか 作者:ダニエル・オーフリ みすず書房 Amazon 現代医学には高度な診断ツールがあるとはいっても、医師と患者の会話は、やはり主要な診断ツールである。皮膚科など視覚にもとづく領域や、外科など処置が基本となる領域でさえ…

幸福観察学会

妖怪と歩くドキュメント・水木しげる (文春文庫) 作者:足立 倫行 文藝春秋 Amazon 私はもともと本書を水木しげるの同行記のつもりで執筆した。水木マンガ論を書くのは最初から自分の役目ではないとわかっていた。時系列に沿った伝記も、すでに自伝が5冊(今…

ドライブ・マイ・カー

きらめく拍手の音 手で話す人々とともに生きる 作者:イギル・ボラ リトル・モア Amazon 私は、手で話し、愛し、慈しむ人たちの世界が特別なんだと思ってきた。正確に言うと、自分の父や母が誰より美しいと思っていた。口の言葉の代わりに手の言葉を使うこと…

「人生は1本の竿に如かず」

釣り名著50冊 作者:世良康 つり人社 Amazon 本書は、『月刊つり人』に2014年6月号より、いまも連載している『釣本耽読』のうちから、50人の著作50冊を選び、加筆訂正をして単行本化したものである。 古今東西の釣り好きたちが著した釣本の森に深く足を踏み入…

ぼくは物覚えが悪い

ミシンと金魚 (集英社文芸単行本) 作者:永井みみ 集英社 Amazon あの、ですね。つかぬことを、おうかがいしますが。 あい。 いよいよだ。いよいよ、くる。決定的な、なんかが。 カケイさん。 あい。 カケイさんは、今までの人生をふり返って、しあわせでした…

砂の惑星

オン・ザ・プラネット 作者:島口 大樹 講談社 Amazon どれくらい経ったかわからない。いつからか風の音がしている。その世界を知るためのものはまだそれしかない。近くでか遠くかで鳴っているのはおそらく風の音だがそれも定かではない。何も見えない。音だ…

「信頼できない語り手」

皆のあらばしり 作者:乗代 雄介 新潮社 Amazon 平日の皆川城址に人は滅多に来ない。栃木駅からだいぶ離れていて、観光客も車で来るしかないようなところだけれど、今日も一台だって見当たらない。山の斜面を削るなり盛るなりして平らに作った曲輪が螺旋状に…

The Abe Family

切腹考 鷗外先生とわたし (文春文庫 い 99-2) 作者:伊藤 比呂美 文藝春秋 Amazon 世の中に切腹愛好家多しといえども、実際に生の切腹を見たことがある人はなかなかいないだろう。わたしはそのひとりなのだった。…… うむと突き刺したとたんに、彼の顔が、さー…

石を黙らせて

なぜならそれは言葉にできるから――証言することと正義について 作者:カロリン・エムケ みすず書房 Amazon 本書では、語ることの障壁を突き止める一方で、まさにその障壁を――他者と力を合わせることで――克服可能なものだと主張したい。この二重の主張は、奇妙…

もうすぐ絶滅するという紙の書物について

編集者とタブレット (海外文学セレクション) 作者:ポール・フルネル 東京創元社 Amazon 私の頬の下にあるのは、恋愛小説の原稿。男と女が出会い、男は結婚していて、女には彼氏がいるという物語……。7ページ読めば、あとは読まなくてもわかる。はっと驚かされ…