2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ねじまき鳥クロニクル

ブロッコリー・レボリューション 作者:岡田利規 新潮社 Amazon ぼくはいまだにそのことを知らないでいるしこの先も知ることは決してないけれども、きみはバンコクの日々、ルンビニー公園にもほど近い、サートーン通りを折れたところの道路に面したアパートメ…

Anyone Who Had a Heart

家庭用安心坑夫 作者:小砂川チト 講談社 Amazon 尾去沢ツトムは、小波の父だった。 厳密には父と言い切るわけにはいかない、あくまで父とおぼしきひと、だった。「あれがあなたのお父さんよ」と言い聞かされてきた相手、というのがじっさいのところであり、…

人生がときめく片づけの魔法

捨てる女 (朝日文庫) 作者:内澤旬子 朝日新聞出版 Amazon 気がついたら、部屋も暮らしもなにもかもが、カオスになってしまった。その理由を考えてみる。仕事も内容どころか種類すら選ばずに請けていたことも、大きい。けれども、やはりあれだ。本も物もなに…

relentless.com

ブックセラーズ・ダイアリー:スコットランド最大の古書店の一年 作者:ショーン・バイセル 白水社 Amazon 〔ジョージ・〕オーウェルが本屋になることをためらった気持ちはよくわかる。テレビドラマ「ブラック・ブックス」でディラン・モーランが見事に演じて…

自分だけの部屋

本で床は抜けるのか (中公文庫) 作者:西牟田 靖 中央公論新社 Amazon 本はかさばる。その上に重い。だからこそたくさんの本を持っている人は、頭をかかえる。部屋の広さや床の強さと本の大きさや重さとの間で、どうやってバランスをとるか日夜苦慮することに…

Question mal posee

幻のアフリカ納豆を追え!―そして現れた〈サピエンス納豆〉― 作者:高野秀行 新潮社 Amazon 私の人生の裏で糸を引く怪しいやつがいる。それは納豆だ。 納豆の恐ろしい魔の手に私が気づいたのは、大学を卒業し、東南アジア方面へ行くようになってからだ。タイ…

最後のニュース

筑紫哲也『NEWS23』とその時代 作者:金平 茂紀 講談社 Amazon 筑紫哲也さんについて書く。と言っても、これは筑紫哲也さんの評伝ではない。第一、僕は73年余に及ぶ氏の生涯のほんの一部しか関わっていない。評伝を記すことなどとても僕の任ではない。けれど…

僕が僕であるために

N/A (文春e-book) 作者:年森 瑛 文藝春秋 Amazon 藁半紙が光って見えたのは十三年の人生で初めてだった。 エアコンが壊れたので教室の窓が開け放されていて、制汗剤と、シャンプーと、洗っていない上履きと、手の甲についた唾液の乾いた匂いが攪拌されていた…

韓国を降りる若者たち

もう死んでいる十二人の女たちと (エクス・リブリス) 作者:パク・ソルメ 白水社 Amazon ある者にとってのそれは、まだ誕生すらしていない時代に出身地で起きた、1980年光州事件だった(「じゃあ、何を歌うんだ」)。 またある者にとってのそれは、3.11のよう…

人形の夢と目覚め

戦争とバスタオル 作者:安田浩一,金井真紀 亜紀書房 Amazon 安田浩一さんと「銭湯友だち」になったのは、数年前のこと。ときどき待ち合わせて銭湯に行き、湯上がりにビールを飲む。つねに反差別の現場を奔走している安田さんと飲めば、どうしてもそういう話…