2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

アメリカンビューティー

エレクトリック・シティ:フォードとエジソンが夢見たユートピア 作者:トーマス・ヘイガー 白水社 Amazon これは偉大なるエレクトリック・シティの興亡の物語だ。この都市構想は「狂騒の1920年代」きってのマスコミの話題の的となり、議会では10年間にわたっ…

さとうきび畑

沖縄の食文化 (ちくま学芸文庫 ホ-25-1) 作者:外間 守善 筑摩書房 Amazon 沖縄は長い間、日本列島の端の端に位置し、その文化も異端、異色と位置づけられてきた。しかし、アジアや環太平洋を広く見渡した地図上に琉球列島を置くとき、それは地図の中心であり…

涙のキッス

ピグマリオン (光文社古典新訳文庫) 作者:バーナード・ショー 光文社 Amazon 雨のロンドンの街角で、三人の男女がひょんなことから出会いを果たす。 ひとりは音声学者のヘンリー・ヒギンズ、話すことばのわずかな母音の特徴から「6マイル圏内に出身地を特定…

ラブ・ストーリーは突然に

なりすまし――正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験 亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ 作者:スザンナ・キャハラン 亜紀書房 Amazon これは患者5213号の初入院の模様である。名前はデヴィッド・ルーリー。39歳の広告コピーライターで既婚者、子ども…

恐怖の谷

古書贋作師 (創元推理文庫) 作者:ブラッドフォード・モロー 東京創元社 Amazon 気の毒な被害者はというと、妹のたっての希望でニューヨーク病院の集中治療室に移され、そこで十日間生き長らえた。意識はほぼないに等しく、妹とも警察とも話せずじまい。それ…

「親切なイラン人」

よく晴れた日にイランへ 作者:蔵前仁一 旅行人 Amazon 24年ぶりにイランを旅した。 イランを再訪する気になったことに深い意味はない。1990年に旅をしたイランと、現在のイランがどれほど変わったかに強い興味があったわけでも実はない。イランがどれほど変…

The Misfits

愛と情熱の山田うどん : まったく天下をねらわない地方豪族チェーンの研究 (河出文庫) 作者:北尾 トロ,えのきど いちろう 河出書房新社 Amazon 山田うどんについて僕[えのきど]が最初に語りたいのは、首都圏郊外の街道沿いの光景だ。ほこりっぽい風に大安…

また一枚脱ぎ捨てる旅から旅

ストリップの帝王 作者:八木澤 高明 KADOKAWA Amazon 「ストリップの帝王と呼ばれる人がいるんですけど、知ってますか?」 とある踊り子からそのようなことを言われたのは、今から八年ほど前のことだ。ストリップの帝王なる不思議な肩書に惹かれた私は、ぜひ…

君たちはどう生きるか

今夜、すベてのバーで 〈新装版〉 (講談社文庫) 作者:中島らも 講談社 Amazon おれは三人の人間に、“三十五歳で死ぬ”ことを予言されていた。 その一人は医者だ。…… 「さすがに年が若いから、回復も早いんだろうね。ただ、これは言っときますがね。あと十年、…

タイガーズ・ワイフ

スモモの木の啓示 (EXLIBRIS) 作者:ショクーフェ・アーザル 白水社 Amazon ビーターによると、母さんは1988年8月18日午後2時35分ちょうどに、53軒からなる村を見下ろす丘にあるいちばん背の高いスモモの木の上で啓示を受けた。それは日々、鍋やフライパンを…