2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧

復興への提言

大災害の時代 三大震災から考える (岩波現代文庫 社会343) 作者:五百旗頭 真 岩波書店 Amazon 未来については、過去ほどにデータは存在しない。しかし過去を立派に分析することは、未来へのよりよき想定の土台となる。そうした観点から、日本列島について、…

化学の授業をはじめます。

ケミストリー (新潮クレスト・ブックス) 作者:ウェイク・ワン 新潮社 Amazon 「わたし」は中国系移民の第二世代。いかにもな英才教育を授けられ、大学院に進むまでは、化学では誰にも負けないとの自負はあった。実際、高校時代に全国区の表彰も授けられたり…

サマータイムマシン・ブルース

東京タワーとテレビ草創期の物語 ――映画黄金期に現れた伝説的ドラマ (ちくま新書) 作者:北浦寛之 筑摩書房 Amazon 東京タワーが作品世界に貢献し活躍するような映像作品を挙げていけばキリがない。本書は、そのなかでも、東京タワーがあの全貌とともに登場し…

生きてるだけで、愛。

無敵の犬の夜 作者:小泉綾子 河出書房新社 Amazon 主人公の「俺」こと界は、九州の農村地帯に住まう中学生。4歳のときに、アクシデントにより右手の小指と薬指の半分を失う。もっとも彼を覆う自己肯定の欠落が、その出来事に由来ているのかはよく分からない…

我が逃走

ヒトラーの脱走兵-裏切りか抵抗か、ドイツ最後のタブー (中公新書 2610) 作者:對馬 達雄 中央公論新社 Amazon 第二次世界大戦のさなかドイツでは、幾多の兵士が軍法違反で断罪された。そのほとんどは脱走した一般庶民の兵士……である。脱走兵ということばには…

血と砂

おかしゅうて、やがてかなしき 映画監督・岡本喜八と戦中派の肖像 (集英社新書) 作者:前田 啓介 集英社 Amazon 1945年8月15日の終戦時、10代後半から20代前半だった大正10年代生まれの若者たちは、戦地となった南の島で、その周辺の海域で、または中国大陸で…

開かれた社会とその敵

フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔 (講談社現代新書) 作者:高橋昌一郎 講談社 Amazon プログラム内蔵方式の「ノイマン型コンピュータ」、量子論の数学的基礎に登場する「ノイマン環」、ゲーム理論における「ノイマンの定理」など、20世紀に進展し…

俺TUEEE

地雷グリコ (角川書店単行本) 作者:青崎 有吾 KADOKAWA Amazon 5月に入ると都立頬白高校は慌ただしくなる。 頬白祭という創立記念の文化祭が近づくためだ。各クラス・部活・有志の集まりなど50以上にも及ぶ団体が準備に向けて動きだし、模擬店や出し物の内容…

アリとキリギリス

昆虫は美味い!(新潮新書) 作者:内山昭一 新潮社 Amazon 外へ出て虫と出会うと、まず食べられるか食べられないかを判断し、どう料理したら美味しいかを考えてしまう。すでに美味しいと分かっている虫に出会ったら、なんとしてでも手に入れたい衝動にかられ…

弱虫ペダル

臆病者の自転車生活 作者:安達茉莉子 亜紀書房 Amazon 本当に必要な人、必要なもの、出会うべき存在とは、こちらがたとえ背中を向けていたとしても、万難をすり抜けるようにして出会うことになっているのかもしれない。自転車はまさに、そんなふうに私の前に…