2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

海原の人魚

裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち 作者:上間 陽子 太田出版 Amazon 沖縄で、風俗業界で仕事をする女性たちの調査をはじめようと思ったのは2011年だった。 沖縄の風俗業界には、未成年のときから働き出した女性たちがいると伝え聞いていた。年若くして夜…

「  」

統合失調症がやってきた (幻冬舎こころの文庫) 作者:松本ハウス 幻冬舎 Amazon 5年生になった頃、塾の先生が家に電話をかけてきた。 「お母さん、潤君のノートをご覧になったことはありますか?」 なんのことだか理解できなかった母さんは、ぼくのノートを見…

アメリ

空芯手帳 (ちくま文庫) 作者:八木詠美 筑摩書房 Amazon 私が妊娠したのは4日前だった。 「あれ、まだカップあったのか」 部署の島に戻ってくるなり課長がつぶやいた。夕方の脂じみた空気に、煙草のにおいが加わる。 「いつのだっけ、あれ。ああ、午後一の来…

Don't Knock My Love

ドリフターズとその時代 (文春新書) 作者:笹山 敬輔 文藝春秋 Amazon 本書の目的は、日本の戦後史のなかにドリフを位置づけ、日本人にとってドリフとは何だったかを明らかにすることである。その際、一つの軸として演劇史の視点を導入したい。一般的に言えば…

魔太郎がくる!!

悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味 (講談社+α新書) 作者:伊藤喜之 講談社 Amazon 2022年、この男ほど物議を醸した人物はいなかったのではないか。 ガーシーこと、東谷義和――。 日本でバーやアパレル会社、芸能プロダクションなどを経営してきた51歳。…

チャーリーとチョコレート工場

ルポ歌舞伎町 作者:國友公司 彩図社 Amazon 「眠らない街」「東洋一の歓楽街」と呼ばれた歌舞伎町は、時代の波に呑まれ、何の変哲もないただの歓楽街へと成り下がったという――。 ネタを求めて歌舞伎町を飲み歩けば、「今の歌舞伎町はつまらない街になった」…

熱のあとに

ホス狂い ~歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る~(小学館新書) 作者:宇都宮直子 小学館 Amazon 歌舞伎町に足を踏み入れたきっかけは、3年前の小さな事件にあった。2019年5月23日、マンションの一室でおきた「ホスト殺人未遂事件だ」。…… 高岡由佳(…

Leap of Faith

海のプール: 海辺にある「天然プール」を巡る旅 作者:清水 浩史 草思社 Amazon 自然の中で冷たい水に浸かると、一瞬にして心と身体が目覚める。それは原初的な本能、野生といった身体感覚が呼び覚まされるからだろう。水に浸かることは陸上とは異なり、「ほ…

万歳突撃

新版 女興行師 吉本せい: 浪花演藝史譚 (ちくま文庫 や 28-3) 作者:矢野 誠一 筑摩書房 Amazon 大阪の女興行師で、こんにちの吉本興業の基礎をつくった吉本せいの生涯は、山崎豊子氏が『花のれん』なる小説に仕立ててからというもの、数々の舞台化、テレビド…

さよならプラスティックワールド

狭間の者たちへ 作者:中西智佐乃 新潮社 Amazon 「元気が欲しい」。 職場の保険代理店でも風采は上がらない、自宅に帰っても乳飲み子を抱えた妻に責め苛まれる、これといった趣味があるでもなければ、そうした愚痴をこぼせる友人のひとりもいない、体質的に…