2024-04-01から1ヶ月間の記事一覧

死貝文書

死の貝―日本住血吸虫症との闘い―(新潮文庫) 作者:小林照幸 新潮社 Amazon 豊かな温泉と果樹の恵みに溢れた豊饒なる甲府盆地は日本屈指の保養地でもあるが、古来より農民を中心に「水腫脹満」なる原因不明の病に蝕まれてきた。 水腫は水ぶくれ、腹に水がた…

Be Alive

「女の痛み」はなぜ無視されるのか? 作者:アヌシェイ・フセイン 晶文社 Amazon アメリカで女性であることは、ただでさえ不安がつきものであ る。ましてアメリカで病気の女性であることは、二重の困難を伴う。あなたの言葉は信じてもらえない。もしくは、見…

オデュッセイア

誰も知らない特攻 島尾敏雄の「震洋」体験 作者:馬場 明子 未知谷 Amazon 私は17年前、「幻の特攻艇震洋の足跡」をテーマに、テレビドキュメンタリーを制作した。敬愛する作家の島尾敏雄が、太平洋戦争の時、震洋特攻隊の隊長だった体験をもとに名作を残して…

これからのスナックの話をしよう

日本の水商売 法哲学者、夜の街を歩く 作者:谷口 功一 PHP研究所 Amazon 本書は、2021年10月末の札幌市すすきの取材から2022年12月半ばの東京銀座での取材まで、コロナ禍のなか、1年余りにわたって日本全国の夜の街をめぐり歩き、そこで営まれる水商売の姿を…

さよーならまたいつか!

シンデレラはどこへ行ったのか 少女小説と『ジェイン・エア』 (岩波新書) 作者:廣野 由美子 岩波書店 Amazon 古典的な少女小説は、現代もなお読みつがれ、広く普及し続けている。これらの物語には、若い読者の心に希望を吹き込み、生きていくための底力を築…

ストレンジ・ワールド

意識をゆさぶる植物──アヘン・カフェイン・メスカリンの可能性 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズⅣ) 作者:マイケル・ポーラン 亜紀書房 Amazon 精神の変容形態には種類がいくつかあり、地球上に存在するどんな文化でも、それを引き起こす植物やキノコ…

デカフェ

中井久夫 人と仕事 作者:最相葉月 みすず書房 Amazon 本書は、2017年から2019年にかけて、みすず書房より刊行された『中井久夫集』全11巻の解説をもとに、大幅に加筆修正をおこなったものである。中井の逝去にあたり、長年の担当編集者であった守山省吾氏よ…

黄金狂時代

カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」 (集英社新書) 作者:室橋裕和 集英社 Amazon メニューを見れば、ランチはカレーとナンのセットで800円なり。マトンかチキンかシーフードか、10種類くらいから選べるようになっている。カレーを2つ付ければ950円だ…

このゴミは収集できません

アミナ (エクス・リブリス) 作者:賀淑芳 白水社 Amazon 「他人に捨てられたんじゃなく、私に捨てられたんだ」。 この短編集をめくっていく中で、序盤から妙に引っかかるモチーフがあった。 「壁」において主人公が暮らす住まいの裏路地は、「ぎょっとするほ…

Who Let the Dogs Out

アンビシャス 北海道にボールパークを創った男たち (文春e-book) 作者:鈴木 忠平 文藝春秋 Amazon 『ファイターズの今後を考える ~ファイターズがめざすゴールはどこか~』 タイトルはそのまま、前沢がここ数年抱えてきた葛藤を表していた。〔北海道日本ハ…