2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

WeCrashed

都市危機のアメリカ――凋落と再生の現場を歩く 作者:矢作 弘 岩波書店 Amazon 本書では、「ジェントリフィケーションの激化」「GAFAに代表される情報通信ハイテク産業の急成長」「ラストベルトの旧煤煙型都市の復活」、そして「郊外の変容」を切り口に、転換…

Roar

82年生まれ、キム・ジヨン 作者:チョ・ナムジュ 筑摩書房 Amazon キム・ジヨン氏に初めて異常な症状が見られたのは9月8日のことである。……チョン・デヒョン氏[ジヨンの夫]がトーストと牛乳の朝食をとっていると、キム・ジヨン氏が突然ベランダの方に行って…

母をたずねて三千里

Schoolgirl (文春e-book) 作者:九段 理江 文藝春秋 Amazon 「あさ、眼をさますときの気持は、面白い」―― そう思えたのも遠い昔、「わからないな。ただ朝に目が覚めることの、何がそんなにおもしろかったんだっけ。ここにあるのは、おなじみの頭痛と喉の渇き…

そうだ ネパール、行こう。

医師が死を語るとき――脳外科医マーシュの自省 作者:ヘンリー・マーシュ みすず書房 Amazon 大工道具や書籍、先祖から受け継いだ絵画やアンティーク家具。これらすべてよりも価値のある、私の所有物の中でもっとも貴重な品物は、自宅に隠してある自殺キットだ…

すべての男は消耗品である

骨を撫でる 作者:三国 美千子 新潮社 Amazon 本書は二冊の中編小説を収める。 続編ということでも外伝ということでもない、しかし両者を対にして並べることでようやく作者の主題が浮上する。というか、先に書かれただし本テキストでは後ろに配置された「青い…

論語と算盤

しょぼい喫茶店の本 作者:池田達也 百万年書房 Amazon 僕は働きたくなかった。 ただただ働きたくなかった。 理由はよくわからない。…… 別に人間関係が悪かったとかブラックバイトだったというわけじゃない。働いている間ずっとスイッチを入れ続けている、あ…

地獄でなぜ悪い

しんせかい(新潮文庫) 作者:山下澄人 新潮社 Amazon 二期生募集 その新聞は家に間違えて配達されたものだった。間違えて配達された新聞にその記事はあった。それは俳優と脚本家、脚本家というものが何なのかよくわからなかったので辞書で調べた、を目指す…

墓のうらに廻る

死んでいない者 (文春文庫) 作者:滝口 悠生 文藝春秋 Amazon 押し寄せては引き、また押し寄せてくるそれぞれの悲しみも、一日繰り返されていくうち、どれも徐々に小さく、静まっていき、斎場で通夜の準備が進む頃には、その人を故人と呼び、また他人から故人…

夢の中へ

恍惚の人 (新潮文庫) 作者:佐和子, 有吉 新潮社 Amazon 「人間五十年という時代には起きなかった悲劇かもしれないな、これは。食生活の向上で平均寿命が延びたとはきいてたが、実態がこれだということに気がついているのかな、世の中は」。 十余年ぶりに本書…

L-O-V-E

聖子――新宿の文壇BAR「風紋」の女主人 作者:森まゆみ 亜紀書房 Amazon 自ら語るような人ではない。誰かがこの人の話を書き留めておく必要があった。 生涯アナキストの気分を持ち続け、大杉栄や辻潤、宮嶋資夫らをよく知っていた画家の林倭衛。その父に可愛が…