2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

理不尽を許さない

1945年のクリスマス 日本国憲法に「男女平等」を書いた女性の自伝 (朝日文庫) 作者:ベアテ・シロタ・ゴードン,平岡 磨紀子 朝日新聞出版 Amazon 私の人生のうちで最もエキサイティングだった時から50年が経ちました。 日本国憲法の草稿に「女性の権利」を書…

気もそぞろ

大洋に一粒の卵を求めて: 東大研究船、ウナギ一億年の謎に挑む (新潮文庫) 作者:塚本 勝巳 新潮社 Amazon 本当のところ、多くの研究者は「何の役に立つか」を考えて研究しているわけではありません。最初は、目の前にある不思議な現象に「あれ、なぜだろう」…

マンデラ・エフェクト

ネルソン・マンデラ: 分断を超える現実主義者 (岩波新書 新赤版 1888) 作者:堀内 隆行 岩波書店 Amazon 本書は、マンデラのハンディな評伝を目指す。今われわれは、偏狭なナショナリズムが跋扈する世界に生きている。他方マンデラは、そのような分断を超え、…

荒れ野の誘惑

カラハリが呼んでいる (ハヤカワ文庫NF) 作者:マーク・オーエンズ,ディーリア・オーエンズ,Mark Owens,Delia Owens 早川書房 Amazon 理想にもえる若い学生だった私たちは、かねてから計画していた野生動物の調査をはじめようと、誰にも頼らずにアフリカに渡…

Frozen

誰がために医師はいる――クスリとヒトの現代論 作者:松本俊彦 みすず書房 Amazon 本書は、2018年5月から2020年12月までの2年半のあいだ、月刊『みすず』誌上で3カ月に1回という比較的ゆっくりしたペースで連載した文章に、1章分の書き下ろしを加えて、本にま…

富久

志ん生のいる風景 (河出文庫) 作者:誠一, 矢野 河出書房新社 Amazon もう、実際の高座を離れてからかなりの時間がたっていて、若い落語ファンのあいだでは、「幻の落語家」などといわれていたのだが、僕にとって志ん生は、いつも現役の落語家であった。だか…

地獄に落ちるわよ

東京復興ならず-文化首都構想の挫折と戦後日本 (中公新書 2649) 作者:吉見 俊哉 中央公論新社 Amazon 歴史的に「復興」の語は、アルカイックなものの復活という観念と結びついてきた。それは古代の復興、失われた伝統や様式の復興、すっかり衰えてしまった家…

decency

ジョージ・オーウェル――「人間らしさ」への讃歌 (岩波新書) 作者:川端 康雄 岩波書店 Amazon 私がこれを書いているいま、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、感染抑止のためのやむをえぬ手段としての、個人の日常的行動の束縛と監視、私権制限、プ…

ビッグボス

滝田樗陰 - 『中央公論』名編集者の生涯 (中公文庫) 作者:杉森久英 著 中央公論新社 Amazon 中央公論社は昨年、創業八十周年を迎えるに当たって、その社史を編纂することを、私に委嘱した。…… この本の中で、私がもっとも力を入れて書いたのは、滝田樗陰に関…

「良心に背く出版は、殺されてもせぬ事」

鬼才 伝説の編集人 齋藤十一 作者:森 功 幻冬舎 Amazon 「新潮社の天皇」「昭和の滝田樗陰」「出版界の巨人」「伝説の編集者」――。 齋藤には、たいそう仰々しい異称がある。数多くの作家を世に送り出し、戦後の新潮社を形づくってきた。斯界では知らぬ者がい…