2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

白い狂気

カラー版 東京の森を歩く (講談社現代新書) 作者:福嶋 司 講談社 Amazon 東京には森はあまりないと思う人が多いのではないだろうか。人びとが多く住む市街地には森が少なく、島嶼部や奥多摩に偏在していることが原因であろうが、じつは東京全体に占める森の…

サボテンの花

「おふくろの味」幻想~誰が郷愁の味をつくったのか~ (光文社新書) 作者:湯澤 規子 光文社 Amazon 聞きなれた言葉であるがゆえに、実体があると思い込んでいるもの。しかし、よく考えてみると、それは実際に存在するのか否か曖昧模糊としており、もしかした…

思いを伝えるということ展のすべて

出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと (河出文庫) 作者:花田菜々子 河出書房新社 Amazon 「X」という奇妙な出会い系サイトの存在を知ったのは、引っ越したばかりの頃だろうか。若い社会起業家の親書を流し…

太陽を盗んだ女

万事快調〈オール・グリーンズ〉 (文春文庫) 作者:波木 銅 文藝春秋 Amazon 朴秀実、岩隈真子、矢口美流紅は、「偏差値低めの田舎の」工業高校機械科の同級生、30人編成のクラスの中でたった3人きりの女子。その歪な男女比にあっても、シスターフッドの匂い…

Bad Day

職業欄はエスパー (角川文庫) 作者:森 達也 KADOKAWA Amazon 1974年3月。ユリ・ゲラーが初めて来日してテレビのスペシャル番組でスプーン曲げを披露したとき、僕は17歳の高校生だった。 番組が放送されたその夜、自宅でテレビを見ていた当時のクラスメートの…

わたしの見ている世界が全て

帝都公園物語 作者:辰郎, 樫原 幻戯書房 Amazon 生まれ育った大阪を離れて東京に来たばかりの頃の話である。ちょっとした調べ物で都立図書館に初めて行くことになって、地下鉄広尾駅の改札を出ると地図を頼りに歩きはじめた。ご存じの方も多いと思うけれど、…

中二病でも恋がしたい!

島田清次郎 誰にも愛されなかった男 作者:風野春樹 本の雑誌社 Amazon 島田清次郎と言っても、現在ではその名前を知る人は少ないだろう。作品も入手は難しく、すっかり忘れ去られた作家になっている。しかし、大正時代の当時は知らないものはないほどの人気…

Everyday Is a Winding Road

偽りのサイクル 堕ちた英雄ランス・アームストロング 作者:ジュリエット・マカー 洋泉社 Amazon 私とランス・アームストロングは、約10年にもわたって天敵同士のような関係を保ってきた。彼のエージェントのビル・ステイプルトンに初めて“告訴する”と脅され…

ある小説家の生涯と弁明

身内のよんどころない事情により (Shinchosha CREST BOOKS) 作者:ペーター・テリン 新潮社 Amazon それは気乗りのしないパーティーをキャンセルするために、その小説家、エミール・ステーフマンが何気なく思いついた一言に過ぎなかった。 〈身内のよんどころ…

コロンブスの卵

千利休 切腹と晩年の真実 (朝日新書) 作者:中村修也 朝日新聞出版 Amazon 千利休は天正十九年(1591年)2月28日に切腹して果てた、と400年を超える年月言い続けられましたが、本書では、それを否定しています。これはなかなか勇気のいることです。しかし、豊…