2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

言語が違えば、世界も違って見えるわけ

日本語を翻訳するということ - 失われるもの、残るもの (中公新書) 作者:牧野 成一 中央公論新社 Amazon 本書の目的は2つあります。1つは、どんなに優れた翻訳であっても原文(本書では日本語)の機微を別の言語(本書では英語)に移し替えられないものが何…

坑夫

荒野の古本屋 (小学館文庫 も 27-1) 作者:森岡 督行 小学館 Amazon 本書は、まもなく21世紀をむかえようとしていたころ、大学卒業後の1年間を、就職することなく、その日暮らしをおくっていたところから話がはじまります。…… 私が身を置いたのは、アルバイト…

真実の口

プロレタリア文学はものすごい (平凡社新書) 作者:荒俣 宏 平凡社 Amazon ふつう、プロレタリア文学を読む、ということは、真摯な態度で社会の裏面に追いやられた人々の暮らしを偲び、万人が自由と幸福に至る道を一緒に模索する心がまえで、聖典を拝するがご…

やめられない、とまらない

痴漢外来 ──性犯罪と闘う科学 (ちくま新書) 作者:原田隆之 筑摩書房 Amazon そもそも、わが国では犯罪者を「治療」するという考え自体が一般的ではない。犯罪者は罰するものであり、「治療」の対象ではないと長い間考えられてきている。…… しかし、そのよう…

Lucy in the Sky with Diamonds

直立二足歩行の人類史 人間を生き残らせた出来の悪い足 (文春e-book) 作者:ジェレミー・デシルヴァ 文藝春秋 Amazon 私は、人間の大きな脳、高度な文化や技術について考えた。人間はなぜ言葉を話すのだろう。子どもを育てるにはなぜ村が必要なのだろう。これ…

トポスの知

偶然の装丁家 (就職しないで生きるには) 作者:矢萩 多聞 晶文社 Amazon ぼくは絵を描けば、本もつくります。日本に暮らしていますが、インドにも家を借りています。 中学1年生から学校に行かなくなり、14歳の頃から1年のうち半分以上をインドで暮らし、日本…

レストランの厨房で絶望し、フードトラックで発狂した

NYの「食べる」を支える人々 作者:アイナ・イエロフ フィルムアート社 Amazon 私がこの本を書くきっかけになったのは、いかにも春を思わせる3月初旬のある爽やかな午後の、偶然の出会いでした。オープンしたてのベジタリアンレストランでランチをした帰り道…

他山の石

抵抗の新聞人 桐生悠々 (岩波現代文庫 社会 327) 作者:井出 孫六 岩波書店 Amazon 時は明治の世、「帝大法学部を出た“学士さま”の身をもって、望みさえすれば、三井・三菱であろうが日銀・大蔵省であろうが、あるいはまた裁判官・検事であろうが、精選された…

ハンガリー狂詩曲

あなたの燃える左手で 作者:朝比奈秋 河出書房新社 Amazon 1965年の小島信夫は、妻の米兵との不倫を契機に崩壊していく一家族に仮託して、ポスト戦後のアメリカ的なるものの浸潤に伴ってキャンセルされていく日本社会、あるいはその変化に対応できない男性原…

おかげさまで

ええじゃないか 民衆運動の系譜 (講談社学術文庫) 作者:西垣 晴次 講談社 Amazon 「ええじゃないか」は約300年にわたる長い間、民衆を支配してきた徳川幕府が、政権を京都の朝廷に奉還し、幕府最後の年となった慶応三(1867)年の夏ごろから翌年のはじめにか…