2020-01-01から1年間の記事一覧

自助、共助、公助、そして絆

大震災’95 (河出文庫) 作者:小松 左京 発売日: 2012/02/04 メディア: 文庫 この大震災が噴き上げた、膨大な多岐にわたる「情報」の収集と記録は、私たちみんなの手でやらなければならない。――一瞬にして、人生を絶たれた5500人の老若の犠牲者、心身と生活に…

タラス・ブリバ

マイナス50℃の世界 (角川ソフィア文庫) 作者:米原 万里 発売日: 2012/01/25 メディア: 文庫 200年も前にシベリアに漂着した日本人たちの足あとをたどって、1984年~1985年、TBS取材班が酷寒のシベリアを横断しました。中でもヤクート自治共和国(現サハ共…

Heavenly Days

グアムと日本人―戦争を埋立てた楽園 (岩波新書) 作者:山口 誠 発売日: 2007/07/20 メディア: 新書 かつて二万の日本人が命を落とした「大宮島」と、いま百万の日本人が遊ぶ「楽園」が同じ島とは思えないほど、両者の間には大きな断絶がある。 ここに本書を貫…

サンクチュアリ

沖縄と私と娼婦 (ちくま文庫) 作者:隆三, 佐木 発売日: 2019/05/09 メディア: 文庫 わたしが沖縄とかかわりをもつようになって、とりわけ売春に注目し娼婦にアプローチしたのは、しかし娼婦の数が多いことに触発されたからではない。どう説明すればいいか、…

業病

ホワイト・トラッシュ―アメリカ低層白人の四百年史 作者:アイゼンバーグ,ナンシー 発売日: 2018/10/01 メディア: 単行本 「すべての人間は生まれながらにして平等であり」という一節は、アメリカの広大な原野が孕む神との契約を定義する標語として、また海を…

かなしみの詩

上京する文學 (ちくま文庫) 作者:武志, 岡崎 発売日: 2019/09/10 メディア: 文庫 近代都市・東京は、大正期の関東大震災、昭和期の空襲と東京オリンピック、そしてバブルと、幾度も破壊と再生が繰り返されてきた。いつ「東京」へ上京してきたか。それぞれの…

Out of the Park

アストロボール 世界一を成し遂げた新たな戦術 作者:ベン・ライター 発売日: 2020/02/14 メディア: 単行本 アストロズの首脳陣は抜群に頭が切れると評判の人たちで、かつてはセントルイス・カージナルスのスカウト部門を率いて輝かしい成功を収めたこともあ…

「わたし」を話さないで

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) 作者:カズオ・イシグロ,土屋 政雄 発売日: 2012/08/01 メディア: Kindle版 私の名前はキャシー・H。いま31歳で、介護人をもう11年以上やっています。…… ともあれ、自分が大層なものだなどと言うつもりはありません。わ…

Awakenings

意識と感覚のない世界――実のところ、麻酔科医は何をしているのか 作者:ヘンリー・ジェイ・プリスビロー 発売日: 2019/12/18 メディア: 単行本 私は麻酔科医である。私は、患者の意識を消し、記憶を失わせ、時間を盗み、体の自由を奪う。そして、心拍数、血圧…

聞けば、見えてくる

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書) 作者:伊藤 亜紗 発売日: 2015/05/15 メディア: Kindle版 数年前に読んだ小説、All the Light We Cannot Seeのうろ覚え、舞台は第二次世界大戦下のフランス、主人公のひとりは盲目の少女、親族を頼って…

アイスと雨音

またね家族 作者:松居大悟 発売日: 2020/05/19 メディア: Kindle版 2017年3月、小さな町で舞台が予定されていた。 出演するのは、オーディションで選ばれた少年少女たち。 しかしその舞台は、中止になった。 その映画の中で、「少年少女たち」の親が描かれる…

まぼろしの紫外線

紫外線の社会史――見えざる光が照らす日本 (岩波新書) 作者:金凡性 発売日: 2020/05/21 メディア: 新書 本書は、やや変則的な歴史書である。歴史書ではあるが、主人公はモノである。しかも、そのモノは目に見えない。さらに、目に見えない〈光〉なのである。…

人間やめますか?

DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機 作者:ベス・メイシー 発売日: 2020/02/19 メディア: 単行本(ソフトカバー) 2015年、プリンストン大学のアン・ケースとアンガス・ディートンの二人のエコノミストが、最初の警鐘を鳴らした。……彼らの衝撃的な分析に…

エクソダス

日本の路地を旅する (文春文庫) 作者:上原 善広 発売日: 2012/06/08 メディア: 文庫 果たしてそれが紀行文なのか、小説なのかすらも定かではない、とにかく昔読んだテキストの一節。場所はたぶんアルジェリア、もしかしたモロッコ、いずれにせよ北アフリカの…

Charles Norris Facts

毒薬の手帖 ―クロロホルムからタリウムまで 捜査官はいかにして毒殺を見破ることができたのか― 作者:デボラ・ブラム 発売日: 2019/12/25 メディア: 単行本(ソフトカバー) 1915年のニューヨーク、一本のレポートが公開される。曰く、「ろくな知識ももたず、…

ドン・キホーテ

坊っちゃん 作者:夏目 漱石 発売日: 2012/09/28 メディア: Kindle版 「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている」。 ただし、本人の言うことには。 「おやじはちっともおれを可愛がってくれなかった。母は兄ばかり贔屓にしていた」。 ただし、本人の言…

unknown

マツタケ――不確定な時代を生きる術 作者:アナ・チン 発売日: 2019/09/18 メディア: 単行本 この本はキノコをめぐる旅についての物語である。その旅とは、不確定性と不安定性のあり様、つまり、安泰という保証がない生について探究するものだ。……不安定である…

〈意志的な死〉

自死の日本史 (講談社学術文庫) 作者:モーリス・パンゲ 発売日: 2011/06/10 メディア: 文庫 心理学や社会学の、自殺をなんらかの病理的兆候として解釈しようという態度は、根本的な妥当性を有するものではない……それと言うのも兆候とは、その文化があらかじ…

鏡の国のA

A3 上 (集英社文庫) 作者:森達也 発売日: 2014/11/07 メディア: Kindle版 A3 下 (集英社文庫) 作者:森達也 発売日: 2014/11/07 メディア: Kindle版 この〔『月刊PLAYBOY』上での〕連載を始めてから二年半が過ぎた。当初はこれほどに長く続くことになると…

大きな玉ねぎの下で

深い河 (講談社文庫) 作者:遠藤周作 発売日: 2016/03/25 メディア: Kindle版 「わたくし……必ず……生れかわるから、この世界の何処かに。探して……わたくしを見つけて……約束よ、約束よ」 その男にとってのきっかけは妻の死だった。もとより転生など信じてはいな…

社会契約論

香港デモ戦記 (集英社新書) 作者:小川 善照 発売日: 2020/05/15 メディア: 新書 ここまでの経緯を簡単にまとめる。デモの引き金になったのは、犯罪者を外国に引き渡す「逃亡犯条例」の改正である。この条例改正が実現すると、中国・北京政府が犯罪者と認めた…

人間不平等起源論

有閑階級の理論―制度の進化に関する経済学的研究 (ちくま学芸文庫) 作者:ソースティン ヴェブレン 発売日: 1998/03/01 メディア: 文庫 有閑階級という制度がその最高の発展を遂げているのは、たとえば封建時代のヨーロッパや封建時代の日本のように、野蛮時…

ぐるりのこと

仮面の道 (ちくま学芸文庫) 作者:レヴィ=ストロース,クロード 発売日: 2018/12/11 メディア: 文庫 本書の主題となるのは、北米大陸西海岸に点在する部族から収集された仮面の数々。 具体的な形態はどうであれ、基本的な形式は変らない。例えば、木製の円筒状…

ラッパのマークの征露丸

鉄路の果てに 作者:清水潔 発売日: 2020/05/21 メディア: Kindle版 日米開戦の翌年である1942年(昭和17)、父は陸軍に招集され鉄道聯隊という部隊に配属されたという。千葉の聯隊施設で訓練を受けてから中国へ。すでに太平洋戦争が始まっていたわけだが、父…

#BlackLivesMatter

黒い司法――黒人死刑大国アメリカの冤罪と闘う (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ II-9) 作者:ブライアン・スティーヴンソン 発売日: 2016/09/24 メディア: 単行本 本書は、アメリカの大量投獄と極刑問題に迫ろうとするものである。立場の弱い人々と向…

理由

ボンベイ、マラバー・ヒルの未亡人たち (小学館文庫) 作者:スジャータ・マッシー 発売日: 2020/05/08 メディア: Kindle版 1921年のインドはボンベイ、主人公パーヴィーンはオックスフォード帰りの23歳、この街唯一の女性法律家、父の弁護士事務所に身を寄せて…

Once Upon A Time in Bordeaux

モンテーニュ 人生を旅するための7章 (岩波新書) 作者:志朗, 宮下 発売日: 2019/07/20 メディア: 新書 わが国では『随想録』などとも訳される、モンテーニュの『エセー』は、世界文学の古典であり、人生の書、英知の書として、その名前はよく知られている。…

国民精神総動員

令和日本の敗戦 (ちくま新書) 作者:田崎 基 発売日: 2020/04/07 メディア: 新書 本書では、平成期の30年余りを軸に振り返り、2012年12月以降の安倍政権の振る舞いを分析し、そして令和の日本が歩むであろう未来を見据えてみる。経済、社会、政治の現場で起こ…

遊びをせんとや生れけむ

南方熊楠 地球志向の比較学 (講談社学術文庫) 作者:鶴見 和子 発売日: 1981/01/07 メディア: 文庫 桑原武夫が評するに、「南方が個個の問題で手がたい仕事をつみ重ねつつも、全体として目立った理論体系を示さずに終わったのは、日本全体の学問的年齢がなお…

欲望の資本主義

巨乳の誕生 大きなおっぱいはどう呼ばれてきたのか 作者:安田 理央 発売日: 2017/11/18 メディア: 単行本 本書は、大きなおっぱいの魅力について熱く語る本ではないし、なぜ男性が大きなおっぱいに惹かれるのかの理由を探る本でもない。ましてや、おっぱいを…